メランのだらだら日記

オタクの女が友達と聖地巡礼したり旅行したりの日々を残すだけのブログ。

「劇場版名探偵コナン ハロウィンの花嫁」感想と考察(※ネタバレしまくってるよ)

1、全体の感想

ハロウィンの花嫁観終わってまず思ったのは「ダメですよ、忘れちゃ」という、高木刑事のセリフが根底にあと映画だということ。死んでいった者たちと、彼らのいない世界で生きていく者たち。大切な人を亡くした人に「時が解決する、忘れろ、乗り越えろ」と誰も言わない。大事な人との思い出を胸に、自分たちは未来へと進む物語。死んでいった者たちとの出会いがあったから、今ここに自分がいる。

 

 今回、降谷さんが亡くなった人と未来を繋ぐ役割を大きく担っていた。過去、彼は「松田から爆弾の解体」を、「萩原から狂気のドラテク」を、「伊達から正義とは何か」を、「ヒロからかけがえのない友情」を得た。

 

 今回の映画ではさらに、三年前の出来事が未来の降谷さんを救っている。松田がプラーミャの爆弾を解体したからコナン君は助かり首輪爆弾を外すことができ、伊達が松田の命を救い降谷さんを空に飛ばし、ヒロの弾丸が犯人確保に繋がり、そして萩原の行動が松田や多くの市民を救った。すべては過去だが、未来に繋がっている。そしてそれを繋いだのは、彼らの意志を継いだ降谷さん。

 

人は死んでも、関わってきた誰かへの影響は消えないし記憶は永遠に残る。最後の最後に、コナン君がふと思い出した萩原の記憶。そのたったひと欠片によって世界は救われる。

 

「あいつらが生きた意味はあるのだ」

 

 そのことが、自分ではなく違う誰かによって証明されたことが、降谷さんは嬉しかったのかもしれない。シェルターで平然としていた彼もまた、誰かを失い、悲しみを抱え、彼らとの思い出を大事にする人間なんだって気づかされる。完璧な演出すぎて、あそこで毎回泣く。タオルぐしょぐしょになる。

 死んでしまった者たちとの思い出と、どうやって向き合っていくか決めるのは、結局は自分。主題歌「クロノスタシス」の面白いところは、残された人が誰かに救われるとかじゃなくて「僕は僕をどう救える」て、やっぱり自分でどう向き合っていくか決める歌。

 

 ハロ嫁の面白いところは、悲劇の押し売りがないこと。松田と萩原の回想なんていくらでもいれられるのに、この映画はそれをしない。むしろしないことで、彼らの友情が強いものだったことを、こちらに伝えてくる。

 エレニカも同様。彼女の話の中に、プラーミャに殺された息子と夫の回想はない。写真すら出てこない。むしろそうすることで、観ているこちらに想像の余白を与えてくるのが、この映画の上手すぎるところ。

松田と萩原、エレニカと家族の話をぶち込んで御涙頂戴演出いくらでもできるんだけど、それをしないことで、大事な人たちとの思い出はその人自身の中にあるって言ってるみたい。人の悲劇の感情を売り物にせずに、大切に扱ってくれている感じが好き。それがハロ嫁の良さの一つだと思う

 

 

 この映画では多くの人が誰かを失っていて、けれで「ダメですよ、忘れちゃ」ていう高木の言葉のように、大事な思い出と記憶を胸に抱えて生きていく。むしろそれしかできないんだよね、残された方は。この映画は、その感情を否定する人が出てこない。

 刑事映画としても最高だったけど、それ以上に失った大事な人との向き合い方を肯定的に描き、大事な人を失った誰かに寄り添ってくれる映画だと思う。「ダメですよ、忘れちゃ」と諭した高木刑事、彼によって救われた佐藤刑事。二人の恋愛映画だからこそ、物語として説得力もあるしうすっぺらくならない。

 降谷、佐藤、高木、そしてエレニカ。彼らと、彼らの大切な人たちの物語。観終わると、「ダメですよ、忘れちゃ」という言葉が耳に蘇る映画。

 

 

2、過去と未来の対比

 今回の映画は対比が多いなぁ~と観てて思った。

 

 まず【警察学校組】と【少年探偵団】のメンバー。

 とりあえず人数が五人っていうのもあるんだけど、コナン君が窓から落ちるのを、下の四人が布広げて受けとめるの、かつてヒロが窓から飛び降りるのを他の四人が教場旗広げて受け止めたのと同じことしてる。

 

 最後も五人で力を合わせて町を守り切った姿が、かつての降谷さんたちと重なる。コナン君は普段、単独行動多いけど、いざとなったら危険を顧みずに来てくれる四人の仲間がいる。降谷さんは一人になってしまったけど、彼らの力がなくても今は一人でも飛べる。でも、あの日はハロウィン。死者の魂が戻ってくる日だから、降谷さんは一人で飛んだんじゃなくて、四人に背中を押されて飛んだのかな。降谷さんには見えてなかったけど、いたかもしれないね。

 

 もう一つの対比は【エレニカ】と【佐藤刑事】

 かつて「揺れる警視庁」で松田を殺した爆弾魔を殺そうと拳銃を向けた佐藤刑事。それを止めたのは高木刑事。

 エレニカは今作において、佐藤刑事と同じ行動をしている。憎しみの対象となるプラーミャに拳銃を向けて殺そうとする。それを止めたのはコナン君。普段は論理的な彼が、最後は言葉ではなく抱きしめることで彼女を止める。(私はここで、成実先生を思い出して大泣きした)コナン君は探偵だから殺すことは絶対にダメだと止めるけど、どうにもならない憎しみがあることを知ってはいるんだよね。

 

 そうして、エレニカはコナン君の説得によってプラーミャを殺さなかった。かつての佐藤刑事のように。けど、あんなに憎んでいたのにわりとあっさり殺すことを止めたのに最初は驚いた。ずっと追いかけてきたのに、少年の言葉でそんなあっさりと……。しかし、佐藤刑事と対になる存在だとしたら、彼女もかつては警察官だったのでは? 旦那さんが警察官、銃の扱い方に長け作戦を練り実行できる、仲間から冷静と言われるリーダー気質。元警察官なら納得できる。

 彼女は美和子が松田あるいは高木を殺された存在。元警察官としての誇りがあり、相手を殺しても愛した人は帰ってこないことを心では理解している。かつては正義側の人間だった。だから、引き止めることができたのかな。

「なぜ殺されなければならなかったのか?」が、かつての美和子の問いのように聞こえる。あの時は高木が止めたけど、今回はコナン君が止めた。「ダメですよ、忘れちゃ」と言えないかわりに、抱きしめることを選んだコナン君。

 

 しかしここで終わらないのがコナン君。

 この後が今回一番エモいと思ったシーンなんですが、エレニカたちにコナン君がロシア語で「ナーダ・ウニチトージティ(息の根を止めねば)」て言うんだ。日本語字幕だと「爆弾を止めよう」てなってるんだけど、これってエレニカたちの組織名なんだよね。

 プラーミャの息の根を止めるというエレニカたちの殺意を、プラーミャにとってのプライドとも言うべき最後の爆弾を止めることで、「息の根を止める」とした伏線回収。脚本、本当に神すぎてヤバイ。

 

 

3、風見務まりすぎ

 今回風見やばかったよね? 務まりすぎてプラス賞与もらえるレベルだが?

 登場から最後まで務まりすぎてた彼ですが、今回降谷さんとの関係性がゼロの執行人から、さらに良い方向に向かっていることがわかってとても感動した。

 

 特に最後。シェルターの中でホッとしてた風見がスゲェ疲れてるの、爆弾解体したからだと思ってたけど、画面左側に防護服が転がっていたので、彼はアレを着ながら爆弾解除したんでしょうね。松田が着ていた物とは違うけど、密封されてるからくそ熱い。サウナ状態。

 自分が失敗したらまず上司は死ぬ。自分も無傷ではない。手の損壊、なにより爆弾の種類としては燃焼するので下手すれば自分も焼け死ぬし、密閉された場所なので酸素的な意味でも死ぬ。それを覚悟で降谷さんの爆弾を解体しに来た。降谷さんは風見ならできると判断し、爆弾解除を命じた。つまり、命を預けられるほどの信頼があるってことなんだよね。

 シェルター思い出すと、外に部下がいない。爆弾がシェルターすら破壊するかもって危惧したのかも。解体失敗した場合被害は最小限に……という覚悟でいる。降谷さんからの信頼の重圧に負けず、解体終わらせた風見がまじで公安務まっている。

 風見はプラーミャの事件で怪我しているのに、任務にでづっぱりなの、公安だからなのかなって思ってたけど、自分のせいで降谷さんが首輪爆弾つけられてしまったことの責任感じてるところありそう。それを思うと「自らカタをつける」ために、死ぬ気でプラーミャ追っかけてたのかも。まじで出来る部下代表風見。

 あと、教えてもらって確認してきたんだけど、爆弾解体終えた風見、降谷さんのグレイのジャケット肩にかけてもらってた。風見ファン劇場で確認してください。労いと感謝が、ジャケットに込められている。すごっ。

 

 

4,プラーミャのその後について

 プラーミャは世界で暗躍する殺し屋だから、日本警察に捕まったことで、露側としては情報吐かれると困る。だから裏で暗殺対象になってると思う。彼女は日本警察の保護下にいない限り、脱走しようものなら暗殺される立場になってしまったわけだ。

 日本としても露への交渉道具として彼女を使えるから、プラーミャは死ぬまで塀の中だと思う。プラーミャはあの時殺されていたほうがむしろマシだった。殺すよりもさらに残酷な復讐をできたわけだ、ナーダ・ウニチトージティは。

 

 

5、降谷さんとコナン君の関係

 降谷さん、コナン君と話してる時楽しそうだったね。かつてやんちゃしていた友人たちと、同じような感覚を思い出していたのかな。言わなくても分かる。けど危険なことは全て自分で請け負うから、今回も傷だらけだったね。

 でも、ゼロの執行人では背中を向けて去る関係だったコナン君と降谷さんが、渋谷スカイの屋上で、最後同じ方向を向いていたのが、大きな関係の変化だと思った。彼が何者かを疑いながらも味方と信じ、協力を仰いでいる。また二人の共闘が、映画で観れたらいいな~と思った。

 

 

6,歴代映画のオマージュ?

 これは私の「考えすぎでは?」案件なんですが、歴代映画のオマージュなのかなって思えるシーンがいくつかあった。

 

 

1作目「時計仕掛けの摩天楼

→松田の解体したプラーミャの爆弾。最後に切ったのは「青いコード」で隣には赤いコードが並んでいる。止まった時間は「00:02」

 

2作目「14番目の標的

→ヘリコプターの落下

 

3作目「世紀末の魔術師」

→プラーミャ(ロシア人・女性の殺し屋)とコナン君が屋上で対峙してるシーン

(セルゲイという男性キャラも登場する)

 


4作目「瞳の中の暗殺者」

→蘭ねーちゃんが燃えるメモを見るシーン

 

5作目「天国へのカウントダウン

 

6作目「ベイカー街の亡霊」

→渋谷の仮装にナイトバロンがいる

 

7作目「迷宮の十字路」

→渋谷十字路

 

8作目「銀翼の奇術師」

 

9作目「水平線上の陰謀」

 

10作目「探偵たちの鎮魂歌」

 

11作目「紺碧の棺」

→哀ちゃんの海賊の仮装

 

 12作目「旋律の楽譜」

 

13作目「漆黒の追跡者」

 

14作目「天空の難破船

 

15作目「沈黙の15分

→ラストに液体が町を襲う

 


16作目「11人目のストライカー

→降谷さんの「健闘を祈る」

 

17作目「絶海の探偵」

 

18作目「異次元の狙撃手」

→パイプを伝うコナン君

 

19作目「業火の向日葵」

 

20作目「純黒の悪夢

→「焦りこそ最大のトラップだ」

 


21作目「から紅の恋歌

 

22作目「ゼロの執行人」

→佐藤刑事が風見を殴るシーン

 

・23作目「紺青の拳」

→OPの「さっさといつものやっちゃいなさいよ」

 

・24作目「緋色の弾丸」

→プラーミャがヒロ(のちにスナイパー)に右肩を撃たれる

 

 

 今までのコナン映画ではなかった「あれ?」てシーンが多々あったので、もしここってこのオマージュじゃね?てのあったら教えてください。追記していく。

 けど、これまじで私の勘違いじゃなくて脚本家が仕込んだやつだったら、天才すぎてヤバイ。

 

 

7、その他小ネタもろもろ(教えてもらったのも含め)

・OPで本編まったく関係ないリングがぐるぐるしてるの、いいところで止めると「0(ゼロ)」になる。

・3年前の回想で、ヒロが拳銃、松田は爆弾、伊達が車のドア持ってるけど、全員それぞれの死因。

・ハロウィン仮装にナイトバロンがいる。

・プラーミャであるクリスティーヌが登場一回目はピンクのニット、登場二回目では青いスカートを着ているので、彼女がプラーミャであることを示唆している。

 

 

とりあえず、こんな感じの感想と考察でした。まとめられて満足。ま

た観に行くから、気づいたら書き足していくかも~。